先生が受賞されたパーマー賞とは、どのような賞ですか?

外国語教育の改善発展に成果を収めた人に対して与えられるものです。受賞した授業は、教師が教えた内容に対して、生徒が教わった通りの受け答えをするのではなく、教わった内容を使って自己表現をしていることが評価されました。

具体的には、どんな授業なのですか?

たとえば「should」の意味や使い方を教えるときには、「友だちの悩み相談」といった、生徒がイメージしやすい設定で授業をします。「ボーイフレンドに振られた」「テストでひどい点数を取った」「行きたい大学に行けそうにない」などなど。生徒はペアワークで、そんな悩みを持つ友だちに対して「should」を使ってアドバイスをし合います。悩みの内容は、私が事前に文部科学省や内閣府などの調査をもとに用意するので、生徒も自分自身の悩みとオーバーラップし、真剣にアドバイスを考えられるんです。

教科書の中のワンシーンではなく、自分に関わる内容なんですね。

授業は「should」の練習なのですが、中身はコミュニケーションの練習です。テーマを自分のこととして考えられるので、授業の食いつきもいい。もちろん教科書やプリントを使った勉強もするのですが、その後には、習ったことを活用するペアワークが待っている。だから、教科書を使った授業も、生徒はとても意欲的に取り組んでいますね。

なぜ、コミュニケーションを大切にした授業をしているのですか?

英語は言葉の教育。言葉は「人対人」のものです。相手のことを知ったり、自分を理解してもらったり、そんなコミュニケーションをとる楽しさを、生徒たちにもぜひ体験してほしいと思ったからです。社会に出ると、自分の意見を言ったり、ネゴシエーションしたりする場面がよくあります。私の授業は、英語という教科を通して、意見を言ったりネゴシエーションの練習をする場なのです。将来英語を使う仕事はしないかもしれませんが、授業で身につけたコミュニケーション力は必ず役に立ちます。

先生自身が英語に力を入れるようになったきっかけとは?

私が賢明で学んでいた頃は、まだカナダ人のシスターがたくさんいらっしゃいました。シスターも英語の授業をしてくださるのですが、入学したての5月のある日、廊下でシスターと会ったときに、「昨日は母の日だったけど、何をしたの?」と英語で聞かれたんです。ベラベラっと言われて、「mother’s day」くらいは聞き取れたのですが、何を言われたかわからず、何も答えることができませんでした。
 
シスターはどこかへ行かれる途中だったのですが、私が答えるまで待ってくださったのです。「carnation」などの言葉を聞き、やっと私は「ああ、母の日に何をしたかってことだ!」とわかったんです。私は肩たたきをしたので、「I do 肩たたき」と、当時は肩たたきの言い方もわからなかったので、そう言いました。そうしたら、シスターが「Oh, You gave her massage! Very nice!」と言ってくださって、これで火がつきました。もうそれからは、授業でも先生の一言一句を聞き逃したくないと思うようになりましたね。

今後の目標をお教えください。

あのときシスターが私の言葉を待っていてくださった。その気持ちがありがたかった。だから、私も、生徒たちの「やろう!」という気持ちは大切にしたいと考えています。テストで答えが間違っていても勉強が足りないと判断してしまうのではなく、いろんなアドバイスをしてやる気のある生徒を引き上げていきたいですね。そのために、生徒のやる気とモチベーションをアップさせる方法をもっともっと勉強していかなきゃと思っています。

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